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心理学ワールド 84号 Over Seas 憂愁のシカゴと研究生活 野村 理朗(京都大学) | 日本心理学会

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Academic year: 2021

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41 Profile─野村理朗 2002 年,名古屋大学大学院人間情 報学研究科単位取得退学。博士(学 術)。専門は認知心理学,社会神経科 学。著書は『なぜアヒル口に惹かれ るのか?』(メディアファクトリー 新書),『ミラーニューロンと〈心の 理論〉』(分担執筆,新曜社),『教育 認知心理学の展望』(編著,ナカニシ ヤ出版)など。

憂愁のシカゴと研究生活

京都大学大学院教育学研究科 准教授

野村理朗

(のむら みちお)  7月4日,夕暮れに到着。ホタル が舞い,木々の合間をリスやウサ ギの姿がよこぎる。その幻想的 な風景は,ミシガン湖に一斉にあ がる花火を迎えて,饗宴へと転じ た。ここシカゴ市の北部にあるエ バンストンは,米国独立記念日よ り,ノースウェスタン大学心理学 部での滞在をスタートしました。  ご一緒したのは文化心理学と神 経 科 学を融 合するJoan Chiaoの 研究室。派手な初日とはうらはら に,日中は,実験や調査の試行錯誤 という楽しくも地道な日々でした。 滞在の目的は,東アジア系米国人 を対象にデータをとり,日本での 結果と比較検討することで,遺伝 と環境のかかわりを丁寧に議論で きないか。そう考えての実験は, 校務への影響を最小限におさえた 夏季からの滞在であったため,工 夫が必要でした。現地スタッフと 協力して,参加者のサンプルプー ルの確認を手始めに,手分けし て知人に声をかけ,手作りのフラ イヤーを学内に撒き,新聞広告で 参加者を募集したりするうちに, 徐々に集めることができました。 そうした過程で,個人的に感じた ことを挙げたいと思います。  まず実験参加者のサンプルプー ルです。通 常,授 業で受 講 生を 募ってリストを作成し,主な心理 評定尺度や認知課題,脳の構造 データなどと束ねて個別の研究 とリンクしますが,それが多岐に わたり,比較的大規模であった点 です。参加者の「歩留まり」や 倫理面を工夫しながら,例えば近 隣の機関と協力して,参 加者の 行き来が可能な距離で,サンプル プールを構築してはどうでしょ うか? それからRA(Research Assistant)は,特定のプロジェク ト経費等で大学院生等を雇用す るのは日本と同様です。しかし, それは研究の推進という目的に 特化・洗練されており,RAは,機 材の管理,データ採取・解析等の ルーティンワークにかかわる一定 のトレーニングを受けたのちに, 力強く主体的に実験を推進する姿 が印象的でした。同じく人材育成 という観点では,サマープログラ ムで学生が海外のラボと行き来す るだけでなく,OJTとしてのスキ ルトレーニングを有機的にリンク する工夫なども参考となりました。  日常は,心理学部の学部長の Dan McAdamを は じ めfaculty memberとのミーティングやセ ミナー開催,近隣はシカゴ大学の Jean Decetyとの交流の機会にも 恵まれました。Jeanは国際学会 の要職を兼ねる多忙な人で,面識 もなく,会合のタイミングが合う かどうかさえもわかりませんでし たが,彼のラボでのミーティング 以降,関心を共有しつつ行き来す るようになりました。このシカゴ で得たネットワークを通じ,今後 何を還元できるか考えています。  肝心なオフは,野外フェスティ バルの自然や音楽に「無心」に 溶けたり,ミシガン湖周辺のドラ イブでは,日がとっぷりと暮れる まで波打ち際で夢を語ったり,ま るで青春を地でゆくかのような週 末もありました。ほんの15分も 郊外に向かえば,昔ながらの大味 なピックアップトラックが走り, 大草原が広がります。かつては 1970年代に米国で過ごした幼少 期を想起し,その原風景にすっぽ り包まれたことは個人的に忘れが たい体験です。  また,ルームメイトのルーツで あるポーランド系米国人のコミュ ニティに入れば,食との出会いは 新鮮だが「メンズトーク」は日 本と大差ないという,お酒も入れ ば,それは盛り上がりました。週 末ともなれば,かつてアルカポネ が拠点としていた「Green Mill」。 そこで耳にするスウィングジャズ や「Kingston Mines」のブルース に酔い,ときに夜も明け,新たな 朝を迎える。そうした日々の中, 睡眠不足との折り合いに苦労した ことも少なからず。他シカゴなら ではの多様な芸術や文化……と想 いを巡らすうちに,どうも腰が落 ち着かなくなりますので,このあ たりで筆をおきたいと思います。  このような機会への理解と協力 をいただきました同僚,関係諸氏 に感謝申し上げます。

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